「戦線スパイクヒルズ」をレビュー・紹介





戦線スパイクヒルズ

あらすじ

1991年、秋。
受験戦争真っ只中にいて、ノムラノブオは受験も危ぶまれる成績の「落伍者」予備軍であった。
しかし、彼には財布から札だけを抜き出すような天才的なスリの能力があった。
右手のプライドさえあれば受験なんてどうでもいい――、彼はそうやって自分を守り続けていた。

ところが、そのスリの現場を偶然同級生に見つかってしまう。
初めてのことに驚いたが、シラを切るノブオ。
しかしその後に続いた同級生の言葉こそが、彼にとっての人生の転機だったのである。

「現役で、すごい大学に入りたくないか?確実な方法があるんだ。お前のその力さえあれば……。」



パッと目を引く表紙じゃないですか?キャラが小さくて
(C) 井田 ヒロト/スクウェアエニックス
作家名:井田ヒロト、原田宗典
掲載誌名:ヤングガンガン(スクウェアエニックス)
ジャンル:青春 友情 バトル 犯罪 心理描写 「少年マンガ」
巻数:7巻(完結)
各賞:なし
補足:特になし



魅力(+余談)


2004年に創刊されたばかりのヤングガンガンも、いまやかなり充実しているように思います。

荒川、すもも、ロト、ニコイチ、咲、WORKING!、バンブーブレードなどの有名どころや、一巻が出たときに話題になった鬼燈の島など、

改めて連載作を見たら知っているのが結構ありました。

この雑誌の特徴って創刊号からずっと続いてる作品が多いんですよね。

九つもそのような漫画があるらしいです。

そんな作品と一緒に去年まで一緒に連載していたのがこの「戦線スパイクヒルズ」。

面白さの割りに、あまり話題になってない類の漫画だと思います。


さて、上のあらすじに書いた「すごい大学に入る確実な方法」というのはヤクザが入試前に手に入れたテスト用紙をスるというものです。

ですので、当初はただの高校生がヤクザ相手に戦うというスリリングな展開の漫画として楽しんでいました。

もちろんこれはこの漫画を読むときの読み方の一つには違いありません。

実際に漫画を描いた井田ヒロト先生は「戦う」というテーマを前面に押し出すために、原作小説のタイトルとあえて違う題名で漫画を描いています。

しかし前回よりもじっくりと読んだおかげか、一気に七冊読んだおかげか、次にこの漫画を読み返したときには全く違う印象を受けたんですよね。

先の展開知っているにも関わらず、始めて読んだときよりも断然面白く感じたんです。

つまり、この漫画は表面上の物語を追うだけなら「普通に面白い漫画」なんですが、

少し視点をあるところに注目させると、「傑作」になりえる漫画であるということです。


この漫画のキーワードは「冒険」です。

これは作中に何度も出てくる言葉ですし、原作小説の題名「平成トム・ソーヤー」が、あの『トム・ソーヤーの冒険』に由来していることからも明らかです。

しかしここからもう一歩踏み込んで「友情」に注目すると、これが見違えるように漫画が面白くなるんですよねぇ。

あんまり言うとネタバレになるんで多くは言えないんですが、

「ヤクザと戦う冒険漫画」として読むより、「冒険の末に友情を手に入れる漫画」として読むことがこの漫画をより楽しむためのコツなんです。


そして、その友情を描くに最適な舞台がこの漫画には設定されています。

「この世界はいわば不満のあるなしに関わらず、誰もが押し流されていく巨大な灰色の流れ」と主人公が言っているように、

ベビーブーム世代による受験戦争が加熱する1991年はまさに若者にとって辛い時代だったのでしょう。

受験に失敗して自殺された方も大勢いたとか……。

その年に生まれたばかりの私でも、当時の雰囲気をおぼろげながらも想像できるようにこの漫画は出来ています。

だからそのようなある種異常な世の中にいて主人公たちのように『独り』でいることの危険性もよく分かります。

だからこそ、彼らが手に入れたものは本当に大切なものなんです。

読後には、メインキャラの三人に「良かったね」とつい言ってあげたくなるほど、なんとも言えない気持ちになってしまいます。


最後に、この漫画はなかなかにショッキングなことが起こります。

だから私が最初から「友情」に注目しろと言っても、初めて読むときと二回目に読むときの印象はガラリと変わるはずです。

時間を空けてでも、そのままの勢いでも良いので、是非二回は呼んでもらいたい作品です。

読み返すときは、冒頭部やチサトさんとの全てのシーン、大麻のシーンなど(←既読者のみドラッグ)が全く違う印象になりますのでね…。









ここから下には私が好きなシーンについて書きます。

まだ読んでない方は、トップに戻った方がいいです。

既読の方で、「あぁ、そのシーンいいよな!俺も好きだぜ!」って気分になりたい人は…

ここを押したら下まで飛びます。

趣味が合うかは保障できませんが。。









































































好きなシーン
(+余談)


ラストシーンが上で述べたとおりお気に入りです。

なんでも原作の原田さんの唯一のお願いは「ラストシーンだけは変えないで」だったとか。

他はどう調理しても良いよとのこと。

原作にはなかった「舌」のエピソードが書けたことなんかも寛大な原田先生のおかげだったんですね。


まぁなんにせよ友達出来てよかったね、ノブオもスウガクもキクチも。

チサトさんは命がけであんたたちをくっつけたんだよ、きっと。

彼女もこれで報われたと思います。